下痢とは
60~70%以上の過剰な水分が便に含まれる、または1日に3回以上水分の多い柔らかい便が出る状態です。腸の運動が速く、水分が十分に吸収されずに便が腸を通過するために起こります。下痢は急性または慢性のいずれかに分類され、さまざまな原因によって引き起こされます。下痢が続くと、脱水を伴うことがありますので、症状がひどい時は早めに消化器内科を受診するようにしましょう。
急性下痢と慢性下痢について
下痢は、症状の持続期間に基づいて急性下痢と慢性下痢に分けられます。
急性下痢
突然発生し、通常は14日以内に自然に改善する下痢の状態です。 主に感染症が原因であり、細菌、ウイルス、寄生虫などが関与することがあります。また、食物中毒、ストレス、薬物なども急性下痢を引き起こす原因となります。
慢性下痢
4週間以上続く下痢の状態で、長期にわたり症状が持続する場合は慢性下痢に該当します。 慢性下痢の原因は多岐にわたります。炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)、腸内感染症、過敏性腸症候群(IBS)、アレルギー、吸収障害、慢性胃腸疾患などが考えられます。
急性下痢は、感染性や短期的な問題に起因しており、多くの場合、適切な治療なしに自然に改善していきます。しかし、慢性下痢は原因となる疾患に対する診断と適切な治療が必要です。どちらの場合も、医師の診察と必要に応じて適切な検査や治療を受けることが重要です。
下痢の種類
下痢になる原因は、下痢の種類によって様々ですが、大きく4つの種類に分けられます。この他、慢性膵炎や糖尿病の合併症、薬の副作用などが原因で下痢の症状が現れている場合もあります。
浸透圧性下痢
浸透圧の高い食べ物を摂取することにより、腸が水分を適切に吸収せず、結果として下痢が生じる状態です。このタイプの下痢は、人工甘味料の摂取過多、糖分の消化不良、牛乳の過剰摂取などが原因とされます。
分泌性下痢
腸内で分泌液が増加することによって引き起こされます。細菌による毒素やホルモンの影響など、さまざまな原因が考えられます。感染性胃腸炎や生理中の下痢などがこのタイプに分類されます。
ぜん動運動性下痢
便が腸を迅速に通過することで生じる下痢です。過敏性腸症候群やバセドウ病などの甲状腺疾患などが原因と考えられます。
滲出性下痢
腸の炎症により、血液成分や細胞内の液体などが漏れ出たり、腸からの水分吸収が低下したりすることで引き起こされる下痢です。クローン病や潰瘍性大腸炎などが関連して症状が起こっている可能性があります。
下痢症状で疑われる疾患
感染性腸炎
激しい嘔吐や下痢、腹痛などの症状が現れます。主に細菌やウイルス、寄生虫などに感染して引き起こされます。
細菌 | 大腸菌、サルモネラなどが感染を引き起こすことがあります。 |
ウイルス | ロタウイルス、ノロウイルス、アデノウイルスなどが感染性腸炎の原因となります。 |
寄生虫 | ジアルジア、アメーバなどが感染を引き起こすことがあります。 |
下痢止めを服用すると、かえって症状を長引かせる可能性があります。自己判断で市販の下痢止め薬を使用せずに医師に相談しましょう。
炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)
下痢や血便、発熱、残便感などの症状が現れます。長期化すると大腸がんを発症するリスクが高くなるので、早めに大腸カメラ検査を受けましょう。
虚血性腸炎
腸の血液供給が減少または阻害されることによって引き起こされる炎症性疾患です。左側腹部~下腹部の腹痛や下痢、血便などの症状が現れます。
大腸がん
大腸がんによって便の通りが狭くなることがあり、腸の正常な運動を妨げると、下痢や便秘、血便などの症状が現れます。
過敏性腸症候群
特定の器質的な病変がないにもかかわらず、慢性的な腹痛や下痢、便秘などの症状が起こります。
慢性膵炎
慢性膵炎は、進行すると痛みの他に体重減少や下痢などの症状が現れます。また、膵臓の消化酵素が不足すると、食物の正常な消化が難しくなり、液状の白っぽい脂肪便が出るようになります。
下痢の検査
まずは、問診で症状や期間、症状が起こる前の食事内容、基礎疾患や常用薬の有無について詳しく伺います。 腹部の触診と聴診をおこない、器質的疾患の可能性が無い場合は、症状を落ち着かせるための薬の処方を行います。 疾患が疑われる場合、血液検査や腹部超音波検査、大腸カメラ検査など必要に応じて追加の検査を行ったうえで診断いたします。
当院では、内視鏡専門医が鎮静剤を使用して苦痛を抑えた大腸カメラ検査で病気の診断を行っています。大腸カメラ検査は、ウトウトと寝ている状態で検査が受けられます。下痢は、感染性腸炎や炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)、虚血性腸炎、大腸がんなどさまざまな疾患でよくみられる症状です。大腸カメラ検査なら、大腸粘膜を直接観察するだけでなく、組織を一部採取して生検を行い病気の確定診断を行うことができます。
下痢が続いてつらい時はご相談ください
下痢の症状が続いてつらい方は、一人で悩まずにご相談ください。下痢は、長く続くと体内の水分バランスが崩れて脱水になることもあります。また、いつ下痢が起こるかわからないという心理的な不安から、外出を避ける、電車に乗ることができないなど、日常生活に支障が出てくる可能性もあります。下痢が1週間以上続くときは、消化器内科へご相談ください。当院では、消化器内科のクリニックとして、医師が丁寧に診察を行い、下痢の原因を調べて適切な治療を行います。下痢が続いてつらい、繰り返す下痢の症状でお困りの方は、お気軽にご相談ください。