過敏性腸症候群とは
過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome、略称: IBS)は、他の病気や組織の損傷などの異常がないにも関わらず、慢性的な便秘や下痢などの便通異常、腹痛、腹部膨満感、ガス、おなかの不快感などの症状があらわれます。 ストレスや生活習慣の乱れなどによって自律神経の働きに異常が起こると、腸の蠕動運動に支障が生じて発症すると考えられています。 生死に関わる重篤な病気ではありませんが、通勤や通学の電車や会議中に急な腹痛や便意が起こり日常生活に支障がでると、心身ともに疲弊してそのストレスから症状の悪化につながります。 長引く便秘や下痢、腹痛などの症状は、過敏性腸症候群の可能性もあるので、消化器内科へご相談ください。
このような症状はありますか?
- 一か月以上おなかの調子が悪い状態が続く
- 腹痛や下痢が前触れもなく起こる
- 便秘と下痢を交互に繰り返す
- 仕事や会議など大事な場面で急に腹痛が起こる
- お腹がゴロゴロ鳴る
- 人前で緊張するとガスが出る
- 通勤・通学中に腹痛が起こる
- 就寝中は症状が起こらない
このような症状に当てはまる方は、過敏性腸症候群の疑いがあるので一度診察にお越しください。
過敏性腸症候群の症状・タイプ
過敏性腸症候群の主な症状は、腹痛、便秘、下痢、腹部膨満感、ガスなどです。腹痛は、発作的に起こる疝痛か持続する鈍痛のいずれかで、排便後に痛みが治まる傾向があります。また、就寝中はこれらの症状は現れません。症状から、以下の3つのタイプに分類されます。
タイプ | 症状 |
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下痢型 |
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便秘型 |
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混合型 |
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過敏性腸症候群の具体的な原因はまだ完全には解明されていませんが、ストレス、食事、腸の運動異常、腸内細菌叢の変化などが関与する可能性があります。
過敏性腸症候群を発症しやすい人の特徴
真面目すぎる、気が弱い、うつ気味の方は特に注意が必要です。精神的なストレスに弱いと発症しやすいとされ、過敏性腸症候群とストレスは深く関係していると考えられています。
男性は下痢型が多い傾向があり、女性は便秘型が多い傾向があり、年齢層は20~40代に多くみられます。下痢や便秘、腹痛が頻発して起こると、外出しづらくなるなど生活の質低下につながります。
過敏性腸症候群の診断
過敏性腸症候群は、慢性的な腹痛、便秘、下痢などの症状を確認して、Rome基準に沿って診断します。
RomeⅣ(R4)基準
6ヶ月以上前から症状があり、直近3カ月の間に平均して少なくても週1日以上、さらに以下のうち2項目以上を満たす
- 排便に関連している
- 排便頻度の変化を伴う
- 便形状(外観)の変化を伴う
Rome基準は、過敏性腸症候群の国際的な診断基準で便通異常や排便回数、便の形状などの症状が3ヶ月以上続いている方を対象に適用されます。
大腸に器質的な疾患がないことを確認するため、血液検査、大腸カメラ検査、便検査、尿検査などを必要に応じて行い診断いたします。
腹痛や便秘、下痢が続いている方は、ご相談ください。
過敏性腸症候群の治療方法
過敏性腸症候群は、症状を抑える薬物療法と併せて生活習慣の改善を行います。ストレスなどが原因で症状が悪化・再発しやすくなるので、ストレスを軽減することも重要です。
過敏性腸症候群は、放置していると稀に大腸がんや虫垂炎など重篤な疾患を引き起こす恐れがあります。便秘や下痢の症状が長く続いているときは、早めにご相談ください。
薬物療法
過敏性腸症候群の治療薬は様々な種類がでています。症状だけでなく、患者様の体質や生活スタイルに合わせて適切な治療薬を選択していくことが大切です。
腸の運動機能の亢進や抑制といった機能改善薬としてセロトニン受容体拮抗薬、抗コリン薬など、過敏性腸症候群の症状やタイプによって薬を選択します。
食事療法
バランスの良い食生活を心がけましょう。
炭水化物や脂質の多いものは、症状を悪化させやすいので摂り過ぎには注意が必要です。
刺激の強いもの(唐辛子など)や酒、カフェインなどは悪化する要因なので、過敏性腸症候群の症状が強く出ているときはなるべく控えるようにしてください。
腸内バランスを整える善玉菌を多く含むヨーグルトやキムチ、納豆などの発酵食品がお勧めです。
運動療法
便秘型は、軽い運動を取り入れることで腸の蠕動運動が活発になり便秘が改善される可能性があります。大腸の動きが活発になることで、便秘の改善につながります。また、腹筋を鍛えることで、便を押し出しやすくなります。
ジョギングやウォーキング、水泳など、週に3日を目安に継続しやすい運動を取り入れましょう。